得たものがあれば失うものがある

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち

 今やベストセラー作家、の内田樹氏の本。学生時代の先輩に薦められてやっと読みました。端々は立場の違いで?という部分もあったのですが、概ねウンウンとうなづく内容。「学び」と「労働」についての本なのですが、特に「学び」に関して共感しました。結局が学校だけに問題があるのでなく、家庭や社会の構造変化があってのもので、特に"不快という貨幣"なんて実にズバリで、返ってもの悲しい。戦後の復興から半世紀、辿り着いたらこんな状況なんて、生活や技術の向上は何なのだろうと暗澹たる気分になる。でも、実は別の経緯から、こういうことをずっと考えていたところもあって、自分の思考の糸口を頂いたような感じ、でも何かが見えたわけではないですが。

 便利になった、その分だけ楽になった、でも幸せになったのだろうか。得たものがあれば失うものがある。貨幣は得ると使わない限りそこにあるが、人の何かは使わないと衰える。そういうことに囲まれていて、自分をどうかカタチにするのか、かなり早い段階から思考しないと流されてしまう。たぶん、日本人論的に展開しているのはそういうのもあるかなあ、と思う。ボクも何か必要だと思う、それはかなりわかっているけど、もう少し考えるつもり。

 「学びからの逃走、労働からの逃走とはおのれの無知に固着する欲望である」と、これ微妙な言葉だけど、かなりいい線。この「固着」、何故固着するのかがポイントのような気がする。