速さというもの

 飛行機というものは便利である。1200kmを一時間そこらで移動する。いやいや、今更ながらスゴイものである。天気のいい日に東京あたりへ向かうと富士を見下ろし、下界を眺め、世界の支配者になったような気分である。

 しかし、これが毎週となると別である。なんだか疲労が蓄積していく。ジェットのスピードが俺の中の何かを破壊していくような気がする。髪の毛が抜けるように、気がつかないうちに俺の細胞が死んでいくような気がする。そう思えば、飛行機に乗る仕事をしている人はほんとタフだなあと思う。どうもスピードって奴に俺は耐性がないみたいだ。だから、車に乗るのも好きではないし、アクセルを踏む気にもならない。そういうわけで、普通の人が生活する上で多大にコストを払う車が俺の生活にはない。これはこれで幸せかもしれないが、それでお金が貯まっているわけでもない。何処へ行くんだ、俺の金。