必殺!III 裏か表か

必殺!III 裏か表か [DVD]

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 僕は邦画はあまり見ないが嫌いなわけではない。好きでもないが、例外は時代劇である。これははっきし言ってかなり好きである。その中でもTVシリーズである「必殺」はかなり好きである。どれくらい好きかと言えば、とんでもなく好きである。ただ、映画版は第1作の派手さ加減にうんざりして、その後の作品は見ていなかった。どーなんだろうと、期待はしちゃいけないけど、やはり期待してしまうほど好きである。

 しかし、だ。やはり、期待はずれである。というか、TVシリーズとは違う作りをあえてしているのだろう。ただの娯楽時代劇である。そう、「必殺」はそうではないところが好きなんだけどなあ。僕の期待が間違ってるのだろう。松坂さんも伊武さんも、そして成田さんも素晴らしいんです。娯楽時代劇としては申し分ないです。損した気はしません。ただ、「必殺」では圧倒的に強い中村主水をみたいんですよ。そして、やはり底を流れていくような悲しみがなければならないのです。巨悪を派手な殺陣で成敗するのは少し違うんだなあ、と僕は思ってしまいます。そう、TVシリーズを見ればいいだけの話です。ただ、京本氏や柴氏演じる仕事人がごく普通に斬り殺されて死んでいく様は、他の時代劇とは一線を画する「必殺」ならではでした。"仕事人"は正義ではないのだ、という基本ははずしてないです。

 「必殺」を話しはじめると止まりません。もう少し話せば、実は"仕事人"は大ヒット作ですが、私が好きなのは"必殺仕置屋稼業"、"必殺仕業人"、"新必殺仕置人"です。他の個性的な仲間とともに、中村主水というキャラクタを成長させたこれらの作品が好きです。特に、"新必殺仕置人"は山崎努演じる"念仏の哲"という中村主水と双璧を為すキャラクタがいて、これが「必殺」の至高であり、これがあるから"仕事人"という娯楽路線に展開できるようになったのだと思っています。この「必殺」の至高に肩を並べるような日本のドラマといえば、松田優作が演じるハードボイルド映画なのかもしれません。ただ、それに比べて安心して見られるのは、悪を悪が成敗するという図式があるからですね。でも、今回この映画を見て、僕も「必殺」を卒業したほうがいいな、と思いました。こんな思いをもう20年も抱いていたのですから、成長しなきゃね。