出口のない迷路

無責任の構造―モラル・ハザードへの知的戦略 (PHP新書 (141))

無責任の構造―モラル・ハザードへの知的戦略 (PHP新書 (141))

 何気に手にとって、JCO臨界事故のことが書いてあったので読むことにした。今回の原発事故も畑村氏が分析するので、どういう結果が出てくるのか期待している。勿論JCOの件とは全く違うのだが、何か奥深く潜んでいるものは同じかもしれない。

 しかし、この本は深い、そしてめげる。特にミルグラム効果、人の誠実さが逆の効果をもたらすこと、これはある意味、ビジネス用件を優先したJCOの件も同じではなかろうか、そして今回の原発事故の事前要因としてあったのではなかろうか。安全神話と言われていることもあるだろうが、直近に直面している問題を解決していくことで長期的な危機感が免罪されていくような、何かそういう心理のメカニズムがあるような気がする。本書はかなり手厳しい、学問として思考し続けた結果を我々が適用する場面では、もの凄い意思の力が必要とされる。それはもう宗教的境地である。でも、それもまた硬直化する要因でもある、出口のない迷路を進むような気がする。読んでよかったと思ったのは、人間ってそんなに強くもない、そういう面を感じることができたことだ。