正反合とはならず正反非

 何気なく手に取り目次を見て興味を持った、そして読んだ。「誰でも良かった」、この言葉がニュースで流れる時苦々しい思いだった。これは動機でも理由でもない、このことを報道する側はどういうつもりなんだろう、と。こういう思いはこの本で間違っていないと思った。

 もっとも、もしボクが10年若ければ、この本は途中で読むのを止めてしまっただろう。ある年齢に達し、色々な経験をしたものでないとこの危機感はわからないのではなかろうか。著者の本を読むのは初めてだが、繰り返し執拗なほど繰り返される例えが、著者の危機感かと思う。たぶん、以前のボクならボヤキとしか思わなかっただろう。

 非社会性については読んでもらったほうがいいと思うが、正反合とはならず正反非となる今の状況は正反が明確に分離する過渡期なのかもしれない、と思った。経済的に格差社会を言われているが、人間性のようなものに格差が生まれる、そうならない為の方法を著者は示している。戦後の日本の彷徨なのだろうか、もっと深いところで揺らいでいる、カオスとコスモスのせめぎあい。途方もない時空の流れを思うと無力だなあ、と酒を呑む。